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虚構の先の真実とは。「SCP-5153」を紹介!

執筆者の写真: ふーめーきんふーめーきん





どうも、ふーめーきんです!

前回の記事に続いて、SCPの解説を

やっていきますよ!

今回はさすがにまともなものを

やりたい所存ですが…


ということでタイトルにもある

「SCP-5153」を読んでいきましょう!






 そんな訳で、まずこのSCPの記事を読んでみましょうか。SCPの一覧表にある項目名(以降メタタイトル)は前回と違って正常ですが、今回はネタバレになるので最後に紹介します。


 そして、SCP-5153の報告書は複数のページに分かれています。なので今回は、ページごとに解説を挟むスタイルで見ていきましょう!



ページ リビジョン 1/5 from 1908/06/10
 

財団記録・情報保安管理局より通達


以下の文書は全米確保収容イニシアチブ(ASCI)とSCP財団のデータベースからアーカイブされたものです。これらの情報はSCP-5153に関連する歴史的資料として保存されています。


— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ

2018/08/12

 

 …初手から聞きなれない単語が出てきてるので説明をば。

 ASCI(The American Secure Containment Initiative: 全米確保収容イニシアチブ)とはSCP財団の前身となる組織です。これにより、財団が発足する前からSCP-5153は確認されていたことになりますね。


 また、RAISA(Records and Information Security Administration: 記録・情報保安管理局)という単語が出てきていますが、こちらは端的に言えば、財団における記録を正しいセキュリティクリアランスレベルを持つ人が見ているかを確認する部署です。第四の壁越しの我々はWikidot.で閲覧できるわけですが、財団世界ではこれらのデータベースは非常に厳重な管理がなされています。今後も恐らく出てくる可能性があるのでこの機会に覚えておきましょう。

 

脅威カタログ番号: ASCI-5153


脅威レベル: Black


脅威の収容: 差し迫った絶滅規模の天体衝突事象に備えて、ASCI-2000の準備を整え、全ての重要な職員を避難させるものとする。


脅威の説明: ASCI-5153は巨大な小惑星であり、現時点では1908年6月下旬(新暦)に地球との衝突が予測される軌道を進行している。この衝突の影響は地球上の全ての生命を滅ぼすと予想されている。

神が我ら皆を御守りくださいますよう。

 

 財団の前身組織なので、報告書の体裁もほとんど同じですね。脅威レベルのBlackは財団で言うKeterに近いと考えられます。


 …というか、それよりも地球がヤバそうです。恐らく隕石が降ってきて人類滅亡シリーズ(BGM : 盆回り)みたいな感じになるのでしょうが、財団が対策を打っていないので当時の技術力ではどうにもならないのかもしれません。


 ASCI-2000(現SCP-2000)の準備をする的な話もしていますが、コイツを掻い摘んで説明すると、起動すると存在する全ての人類を完璧に複製できる装置です(現在一部が故障中)。要するにコイツを起動しないと人類は存続出来ないよと言っているようなものなのですが、これは根本的な解決にはなりません。万が一起動できなくなってしまえば終わりですし、地上の環境が完全に終わってしまえば起動できても意味がありません。


 果たして財団はこのクソデカ隕石君をどう対処したのでしょうか。RAISAの文書を読む限りでは、2018年までは人類は存続してそうですが…?


 とりあえず次の文書を読んでみましょうか。



ページ リビジョン 2/5 from 1923/02/02
 

アイテム番号: SCP-5153


オブジェクトクラス: Safe


特別収容プロトコル: 世界的な科学コミュニティに潜入している財団職員は、SCP-5153の真の性質を隠蔽するため、偽情報活動ガンマ-19 (“空中爆発”)の流布の調整を行います。


説明: SCP-5153は1908年6月30日、ロシアのポドカメンナヤ・ツングースカ川の近隣で発生した大規模な小惑星落下事象を指します。SCP-5153を引き起こした直径15kmの隕石は地球の大気圏に突入した後、地表から約7~10km上空で自然に消失しました。SCP-5153の消失に伴うエネルギーによって15メガトン相当の爆発が発生し、2,150 km²のシベリア地方のタイガが破壊され、3名が死亡しました。

 

 あれ…生きてる…?


 人類滅亡シリーズほどのサイズでは無いようですが、それでも直径15kmはヤバい大きさですね。しかしそんなクソデカ隕石君、直撃する寸前で消失してしまったみたいです。今回みたいに隕石が突然消失した場合、それが存在していた部分に空気のない空間ができるので、そこに一気に空気が流入して爆発が発生することがあります。


 この爆発、実は元ネタがありまして。それは通称ツングースカ大爆発と呼ばれる事件です。これは人為的なものではありませんが、非常に大規模な爆発であり、今も爆心地には跡が残ってるとかいう話もあります。一応表向き(現実)は数~数十mの隕石が空中で約5メガトンの大爆発を起こしたことによる惨事という情報が知られています。


 結局のところ、被害がシベリアだけで済んでよかったのですが、それはそれとして異常現象なのは変わりないので情報の秘匿が必要になります。ツングースカ大爆発はこのSCPが引き起こしたということがわかったところで、まだ残っている情報を見るために次にいきましょうか。



ページ リビジョン 3/5 from 1947/01/14
 

LEVEL 5/5153 CLASSIFIED(※1)


アイテム番号: SCP-5153


オブジェクトクラス: Keter


特別収容プロトコル: 1945年の国際連合地球近傍天体命令に従って、SCP財団は国際連合世界オカルト連合、アメリカ合衆国国家軍政省(NME)ペンタグラム部門、その他様々な要注意団体と協力して人類の存続を保障します。SCP-2000は待機状態にあり、O5評議会の要請に応じて起動する準備が整っています。財団人工知能コンスクリプト Alexandria.aicにはSCP-5153進行状況の追跡任務が課せられています。


説明: SCP-5153は直径約13kmの小惑星であり、1947年2月12日に地球と衝突する軌道を進行しています。財団の宇宙物理学者は、SCP-5153がソビエト連邦のシホテアリニ山脈に落下し、それによって白亜紀-古第三紀の大量絶滅事象に匹敵する影響を及ぼし、最大で地球上の生命の75%以上が絶滅すると予測しています。

 

 なんかまた来てますけど~~~~⁉


 何千万年に一回くらいしか起こらないはずの事象が40年で2回起きるとんでもないことになっていますが、来てしまったものは仕方がありません。今度の隕石は13km。前回より少し小さいが依然として衝突の影響はとても大きく、最大で地球上の生命の75%以上が絶滅すると予測されています。極めて何か、地球に対する恨みを感じますね。落下予測地点はロシアの東側、ウラジオストクにほど近いシホテアリニ山脈なので、多分日本もただでは済まないでしょう。


 要注意団体に関しては長くなるので記述を割愛しますが、今回は敵対している場合ではないので協力して人類を守ることに全力を注がねばなりません。SCP-2000も再び起動準備に入っていますね。


 そして、財団の人工知能コンスクリプトAlexandria.aic君に、SCP-5153の追跡任務が割り当てられています。以下がそのデータですが、計測した時間、地球との距離、衝突までの時間が表にまとめられていますね。


※1

 

補遺5153.1: 財団AIC Alexandria.aic ログ

時刻と日付 (GMT — 年/月/日)

地球との距離

衝突予測時刻

0000 — 46/01/01

2,890,000 km

1年1ヶ月11日

0000 — 46/06/01

1,530,000 km

0年7ヶ月11日

​0000 — 47/01/01

360,000 km

​0年1ヶ月11日

0000 — 47/02/01

220,000 km

0年0ヶ月11日

0000 — 47/02/11

7,000 km

0年0ヶ月1日

0000 — 47/02/12

[対象物が見つかりません]

[対象物が見つかりません]

 

 …あれ?「対象物が見つかりません」…?



ページ リビジョン 4/5 from 2018/08/12
 

LEVEL 1/5153 CLASSIFIED


アイテム番号: SCP-5153


オブジェクトクラス: Safe


特別収容プロトコル: SCP-5153は低レベル偽情報活動を通して収容されます。財団の科学者はSCP-5153を発見するため、その可能性がある全ての地球近傍天体を追跡、監視します。SCP-5153が再発見された場合、その軌道と到着予測日時を追跡します。SCP-5153は人類の存続とヴェール政策のどちらに対しても脅威を及ぼさないため、無力化の試みは実施されません。


説明: SCP-5153は直径約13kmの隕石です。例外無く、SCP-5153はシベリア地方の何処かに落下する軌道で地球に接近します。これにも拘らず、SCP-5153は地表から15km圏内で消失し、如何なる類のクレーターも残さずに大規模な爆発のみを引き起こします。

 

 いよいよこのSCPの正体がわかってきましたね…!


 SCP-5153の正体は「シベリアの何処かに落ちてきて、地表から15km程度の高さで爆発しながら忽然と姿を消してしまう隕石群」とのこと。要は寸止めされている訳なんですが、その大きさと消え方にさえ外部に勘付かれなければ他に何かする必要はないので、収容方法も比較的簡素なプロトコルになっています。被害が出ることもあるようですが、一応自然災害の範囲ですし、異常存在が人々の目に映ることも無いので、特に無力化なども試みられていないみたいですね。


 なにやら出現記録があるらしいのでこちらも以下に列挙します。

 

補遺5153.1: 確証されたSCP-5153出現事例

確証されたSCP-5153の出現事例は1908年、1941年、1947年、2002年、2009年、2013年、2017年、2018年に発生しました。財団の宇宙物理学者は現在、2020年2月に地球と衝突する軌道を進行中の、SCP-5153と推定される地球近傍天体を追跡中です。

落下日時

場所

死傷者

​1908年6月30日

ロシア、ツングースカ川

3名死亡

1941年4月9日

ソビエト連邦、チェリャビンスク

無し

1947年2月12日

ソビエト連邦、シホテアリニ山脈

無し

2002年9月25日

ロシア、ボダイボ

無し

2009年2月7日

​ロシア、チュメニ州

無し

2013年2月15日

ロシア、チェリャビンスク

1491名負傷

2017年12月15日

ロシア、カムチャツカ半島

無し

2018年12月18日

ロシア、カムチャツカ半島

無し

2020年2月25日到着と予測

ロシア、バイカル湖に落下と予測

死傷者無しと予測

 

 2013年のものだけ落下場所がちょっと悪かったために怪我人が多く出ましたが、幸いなことに死者はいませんね。この件はチェリャビンスク隕石として知っている人もいるかもしれません。あの隕石も表向き(現実)は大気圏突入時に直径17mとされていましたが、実はこんなデカい奴だったと思うと恐ろしいものですねぇ…。ですがこれと最初のツングースカ大爆発を除けば、死傷者は一人も出ていません。これはとても喜ばしいことです!


 なにやら盛大にビビらされていた財団ですが、慣れてしまえばこの通り。これで一安心ですね。


 …そういえば、確かもう一つページがありましたね。一応そちらも見てみましょうか。



ページ リビジョン 5/5 from 2020/02/25
 

SCiP Net Database


SCP-5153


ERROR: 財団データベースに接続できませんでした

[DATA LOST]

 






…はい?

データロスト⁉









 …なんだかよくわかりませんがデータが吹き飛んでいるようです。一体何があったのでしょうか…? 一先ず次の項で考察していきます。



消える隕石に踊らされ

 最新のバージョンの更新日は2020/02/25…一つ前の「ページ リビジョン 4/5」で言及されていた、現在SCP-5153に指定されている隕石が地上が地表へ到達する日付ですね。


 まぁ大体わかってきてると思うので、先に答えを出しましょう。


 最後の隕石は消えなかったのです。


 最初のうちは対策していた財団も、何回も消失する異常性を見せつけられ、やがてただ見ているだけになっていたため、突然来た本物の隕石には為す術が無かったのです。まあ普通に世界終焉シナリオ待った無しですね。


 ここでこのSCP-5153のメタタイトルを明かします。この報告書はアメリカ(財団本部)で書かれたもので、本部での原題は「The Meteor Who Cried Wolf」。これはこのSCPの元になった童話の英語でのタイトルの”Boy”の部分を”Meteor”に入れ替えたものです。しかし、日本でも有名なこの作品は日本語のタイトルが明確に決まっておらず、絵本においても様々なタイトルで出版されています。


 そんな訳で日本支部でのメタタイトルは、原作タイトルが不定でもこちらはほぼお決まりの、この童話の主人公が幾度となく叫ぶある台詞をもじったものになっています。


SCP-5153

「隕石が来たぞーッ!」







…という訳で、SCP-5153を

紹介してきたわけなんですが…

個人的にめっちゃ好きなんです

こういうの!

筆がノってるので次回も

SCP記事にする予定です!

どうぞお楽しみに…!






感想戦

 童話ではオオカミは最後以外は本当に来ていた訳ではありませんでしたが、SCP-5153は寸止めがあったとはいえ本当に来ていました。仮にオオカミ自身が幾度と無く本当に羊たちの寸前まで来て、何故か引き返すことを繰り返したとして、誰が警戒を解いたことを責められるでしょうか。


 最後に衝突した隕石は本当に不幸にもSCP-5153と同じような大きさと軌道を持った、異常性の無い隕石だったのでしょうか。それとも、SCP-5153の一部だったのでしょうか。それは、もう誰も知ることができません。だって既に滅亡してるのですから。



 童話とは、多くは教訓を伴い、子供に読み聞かせることでその価値観を育む話です。元ネタの童話なら、嘘をついたことで少年が後に報いを受けます。この話の教訓は「嘘をついてはならない、いざという時に誰も助けてくれなくなる」ということです。


 しかし、この話は童話ではありません。教訓もありませんし、報いを受ける”少年”もいません。


 ただ消える隕石に踊らされ、滅亡してしまった財団と人類の、喜劇でしかないのです。



 まあそれはそれとして、こういった理不尽な話も、教訓のある童話も、私的にすごく好きなんですよね(だから今回選んだわけですが)。前回がかなり優しいSCPだったので、対極を持ってきてやろうという意思もちょっとだけ孕んでいます。


 あと、本来の「オオカミ少年」は最後に嘘つきが報いを受けるだけではなく、知らせを信じなかった大人たちも大事な羊をオオカミに食べられてしまうという結末だそうです。本当の教訓は「誤報が続いても必要最小限の警戒を緩めてはならない」ということになりますかね。そうなってくると今回のSCPに非常にマッチしていると思います。


 ということで、長くなりましたが…以上で今回の記事を終わらせようと思います。ここまでの閲覧、お疲れさまでした…!

 

SCP-5153 by TheMightyMcB (https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5153)

この文章はクリエイティブコモンズ 表示-継承3.0ライセンスに従います。

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