ふーめーきんと学ぼう!! ⑧「酷い星座の神話」

どうも、ふーめーきんです。
一年以上放っていた勉強記事です。
今回は西洋美術と世界史の
混合、なのかな?
そんな感じで始めていきますよ!
さて、皆様は星座をどのくらいご存知でしょうか?この記事が投稿されている冬頃に見える星座といえば、冬の大三角を構成するこいぬ座、おおいぬ座、オリオン座あたりでしょうか。他にもおうし座などがありますが、都会在住の方には冬の大三角くらいしか確認できないかもしれません。その冬の大三角も一時期消滅の危機にあったこともある(※1)わけなんですが…。
それはともかく、おおよその星座(新しく作られた星座には当然無いので、全てではありません)にはなぜ天に昇ったのかの理由となる神話が存在します。今回はそれにまつわる話をしていきたいなと思ったのです。しかし…。
まぁだいたい酷いです。一応星座の神話はギリシャ神話をベースに作られていますが、ほぼゼウスが直接あるいは間接的に関わっています。ゼウスは全能の神であるのと、色欲の罪として地獄に叩き落としたほうが良いくらい無類の女好きであるのが悪いので、昼ドラレベルのどろどろした展開が非常に多いです。その中の一つ、『おおぐま座とこぐま座』の話を以下に示します。
女神アルテミスに従うカリストという乙女がいた。神々の王ゼウスは以前から彼女の美しさに惚れ、カリストと関係を持つ機会をうかがっていた。そんなあるとき、狩に励んでいた彼女が暑さに疲れ、森の中で矢筒を枕に休んでいるのを見つける。ゼウスは誰もいないのをいいことに、自分の娘であるアルテミスの姿に変身して接近し、彼女の純潔を奪った。 その後、アルテミスはカリストが妊娠していることを知ると、すぐさま彼女を追放した。ゼウスは正妻ヘラに見つかるのを恐れ、出産後のカリストを熊に変えてしまう。 後にカリストは森の中で成長した息子アルカスに出会うが、彼は当然自分の母が熊になっているのを知らないので彼女を射殺してしまう。ゼウスはそんな二人を憐れみ、それぞれおおぐま座とこぐま座にした。

↑ティツィアーノ作「ディアナとカリスト」。ディアナはアルテミスのことです。
…エロジジイが全能の力を得るとどうなるかがわかる事例ですね。彼の病的な女好きと身勝手さが垣間見えますし、自分の娘に変身するとはうらやまけしからんです。そういえばこれって疑似百合なのになんで妊娠してるんですかね。
※1…オリオン座のベテルギウスが超新星爆発した容疑に関して
さて散々引っ張りましたが、今回の主題は「かに座」です。黄道十二星座の一つでもあるかに座のどこが問題なのか。ちょっと神話を見てみましょうか。
ヘラクレスは自分の娘と妻を殺した罪(※2)を償うために神託を受け、12の苦行の旅にでることになる。その12の苦行のうちの1つに「ルレネーに住むヒドラの退治」がある。ヒドラは9つの頭をもつ蛇で、頭を切っても新しい頭が生えてくる上に、頭の1つは不死身であった。甥であるイオラーオスの助言によって、切り落とした頭が生えてくる前に松明で焼き、再生能力を封じた。 しかしそこに現れたのがヒドラの仲間である蟹であった。蟹はヒドラに加勢するためにヘラクレスの足を挟む。しかしヘラクレスはそれに気付かずに蟹を踏み潰し、ヒドラの不死身の頭は大きな岩で地面にうずめて討伐に成功する。ヘラは、ヘラクレスを苦しめたヒドラと可哀想な蟹を天に上げ、それぞれ「うみへび座」と「かに座」にした。

↑ペルッツィ作「ヘラクレスとルレネーのヒドラと蟹」。よく見ると足元に蟹がいます。

…ええと…
…これ蟹のくだりいる?
あからさまに実力差があるのに友のために立ち向かう心意気や良しなんですが、いかんせん自分自身が普通の蟹なんですよね(一応「化け蟹」として書かれている文書があるらしいのですが…)。正直犬死にです。蟹ですけど。こんな話を描くなら蟹のくだりを無くして別で作り直したほうが蟹も報われるのではないでしょうか。
同じ黄道十二星座であり、節足動物仲間のさそり座ですら自身の毒でオリオンを苦しめたというかなりの活躍を見せているので、この扱いの差にはさそり座君も苦笑いでしょう。それに、わざわざ黄道に昇ってしまったために今日までかに座の神話が語り継がれていると考えるとどんどんかわいそうになってきます。
というわけで、今回の目的はいたって簡単。
「かに座より成り立ちの酷い星座は存在するのか?」
これに関して調べていきます。
※2…なぜヘラクレスは自分の家族を殺したのか
そこで星座の神話にまつわる本をいろいろ探してみたのですが、かに座のような話はまぁ見つかりません。というのも基本そういうのが載ってる本って、「星座ってこんなにロマンチックなものなんだよ!みんなも星座を見つけてみよう!」っていうのをメインで作っているので、そんなしょぼい成り立ちの話なんか載せられないのです。
とりあえず、手元の書籍にあるもので気になったものを紹介します。まずは『カシオペヤ座』です。
カシオペヤは、エティオピア王ケフェウスの妻であり、アンドロメダ姫の母親である。彼女は自慢好きで、「自分の美貌は海にすむ女神より優れている」と自惚れていた。これに腹を立てた海の女神たちがポセイドンに訴えると、ポセイドンはエチオピアに海の怪物ケートスを遣わし、災害を引き起こした。 ケフェウスが神託を立てたところ、災害を止めるにはアンドロメダをケートスに生贄として捧げなければならないとのことだった。神託に従ってアンドロメダは生贄に出されたが、勇者ペルセウスによって助けられた。 結局、カシオペヤは戒めとして椅子に縛りつけられたまま空に上げられてしまう。
ひとこと言うのであれば、自慢話はほどほどに、でしょうか。というかこの話、カシオペヤ座以外にも、ケフェウス座、アンドロメダ座、くじら座、ペルセウス座が登場しています。大集合ですね。しかしまぁ、「自慢話ばかりしていたら椅子に縛り付けられて天を回る羽目になった」って字面だけ見るとひどいですよねコレ。
次に冬の大三角を構成する星座の一つ、『おおいぬ座』。
神犬ライラプスは、ヘパイストスがゼウスのために作った、必ず獲物を捕まえる力を持つ犬であった。その飼い主はころころ変わり、最終的にはケパロスのものとなった。 あるとき、テーバイの国に牝狐がやってきた。これを退治するためにライラプスを放ったが、この牝狐は誰にも捕まらないという運命にあったために牝狐は逃げきることができず、ライラプスも牝狐を捕まえることができず、堂々巡りとなった。これを見たゼウスは、両者を石に変え、ライラプスを天に上げておおいぬ座とした。
バグの発生を全システムの停止でどうにかするプログラマーみたいな逸話ですが、ライラプスでどうにかなるやとしか思ってなかったのでしょうか。かに座と同じく動物系の星座はこういう「動物は悪くない」系の話が半分を占めてますよね。もう半分はゼウスなどの神々が化けた話です。
ちなみにおおいぬ座にある星、シリウスは、地球から見える星の中では最も明るいとされています。2番目はりゅうこつ座のカノープスだそう。
さて、動物系が続きます。次は『うさぎ座』。
あるところにオリオンという男がいた。海の神ポセイドーンの子で優れた猟師だったが、「この世に自分が倒せない獲物はいない」と驕ったため、地中から現れた蠍の毒によって死んだ(さそり座とオリオン座)。 このオリオンは気性が荒かったので、神は優しい心を持たせるために兎を送り込んだ。しかし、オリオンは兎を踏み潰してしまったため、神は可哀想な兎を天に上げた。
カシオペヤと同じくオリオンも驕った結果の因果応報を受けていますね…。それよりもうさぎ座の内容が薄すぎて書くことがないんですけど…?
かに座の話をかに座単体にするとこんな感じでしょうが、それにしてもこう、もう少し手心が欲しいですね…。一応、オリオンに仕留められそうになったが、あまりのかわいさにオリオンも躊躇したと記述している書物もあるようですが、それにしても内容が無いですよね。
次は、今回最後の紹介です。なんと、聖闘士星矢、ベイブレードなど、星座が関係するアニメでは大抵主役に抜擢されている『ペガスス座』です。
天馬ペガススは、ペルセウスがメドューサの首を切り落としたときに出た血が、 岩にしみこんだ時に生まれた。 雪のように白く、銀色の翼を持つペガススは、勇者ペルセウスを乗せてアンドロメダ姫を助ける。 その後、ペガススは女神アテナの神殿で飼育されていたが、ある時コリント国の王子ベレロフォンが、キメラ退治のために成功をアテナ神殿の前で祈願したところ、女神アテナが現れ、ペガススを授けた。 ペガススの力を得たベレロフォンは見事キメラを打ち倒すが、その後、自分の力に自惚れてしまい、神になるために天界を目指すようになる。その様子を見ていたゼウスは、一匹のアブを放ち、ペガススを刺させた。驚いたペガススは、ベレロフォンを振り落とし、そのまま天に駆け上がって星になった。
他の星座と違い、自分から天に駆け上がっていって星になるパターンです。おとめ座もこれに該当しますが、ゼウスは何だってペガススを攻撃したのでしょうか。驕り高ぶってる人間を何か別の生物に変えるとかそんなのでもよかった気がしますが…。
とりあえず今回は以上です。そもそも全天88星座のうち、星座と神話がセットになっているのは全体の6割ほど。その中でも話が雑過ぎるもの、となるとかなり絞られますよね。
個人的には今回紹介した中だと、かに座よりもうさぎ座の方が圧倒的に酷いのですが、うさぎ座はオリオン座の真下に存在する割にはほとんど知られていません。そうなってくると知名度の影響でやはり『かに座』を酷い星座の成り立ちナンバーワンにせざるを得ませんが、下々で争っていてもできてしまった神話はもうどうしようもないので、今回は引き分けということで。
この記事は12月に投稿されていますが、この時期であれば冬の大三角がはっきり見えるでしょう。もし見えたのならオリオン座の真下を探してみてください。そこにうさぎ座があります。何ならその左隣におおいぬ座もいます。春先にはかに座も出てくるのでそれまでは今回の話を思い出して鼻で笑うか勇敢さを褒め称えるとしましょう。

今回のためにギリシャ神話を
結構読んだのですが、人間関係が
複雑で複雑で…
皆さんも下ばかり見ずに
上を見上げましょう!
そこに星座があるのですから!
参考文献
怖いへんないきものの絵|中尾京子 早川いくを
新装版 四季の星座図鑑|藤井旭
ときめく星空図鑑|永田美絵/廣瀬匠


いやー終わった終わった…
あれ、まだ残ってるって?
いやだってあれはさ…
紹介するのはなんというか…

ってちょっ、ちょっと待って!
スクロールしないでぇ!
実はもう1つ紹介する予定だった星座の成り立ちがあったんです。しかしあろうことかふーめーきん自身の星座である『いて座』だったとは…。
いて座のモデルとなったのは、ケンタウロス族の「ケイローン」。ケイローンは、粗野で好色と言われるケンタウロス族の中で、賢く知性に溢れた人物であり、医術に優れ、薬草を用いて多くの人の命を救った。医学だけでなく、その他の分野での知識も豊富で、アスクレピオスやアキレウスの師としても活躍していた。 しかしある時、ヘラクレスの矢が誤ってケイローンに刺さってしまう。この矢には、ヒドラの毒が塗られていたため、ケイローンは倒れて毒に苦しむが不死身のため死ねず、結果、不死身の命をプロメテウスに譲り、息絶えることを選んだ。ケイローンの様子を見ていたゼウスはその死を嘆き、天に上げていて座にした。
オリオンもそうなのですが、毒に苦しんで死ぬ登場人物は意外と多いというか、恐らく(当時の人々の考えとして)こうでもしなければ不死の存在は倒せない的なアレだと思うんですけど、それにしてもやはりあっさり感が否めません。ヘラクレスやオリオンのように他の星座と絡むこともあまりないので、十二星座の中ではかに座に次いで不遇な扱いな気がしますね。自分の星座をこき下ろす羽目になるとは…。

いやだって自分の星座くらい
まともでありたいじゃん…?
え、かに座の人が可哀想って?
…はい、おっしゃる通りです
ごめんなさい……
参考文献(追加)
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