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  • 執筆者の写真ふーめーきん

[PQLが閲覧上限値を超過しています]! SCP-1374-JPを紹介!(後編)








どうも、ふーめーきんです。

この記事は後編になります!

前編を未読の方は先にそちらを

ご覧頂ければと思います…!








ファイル#03

 これまで報告書、タイムラインレポートと、2つの文書を見てきました。ということで最後の文書、インタビュー記録を見ていきましょう。


 このインタビューは、Vに変化してしまった財団の研究員に瀬戸博士が行ったものです。瀬戸博士はVに変化しないように適切な処置を受けた状態で臨んでいるので安心ですね。

 

ファイル#03「インタビュー記録1374-JP」を開きます………


対象: SCP-1374-JP-V-1(元██研究員)

インタビュアー: 瀬戸博士

付記: 瀬戸博士は事前に1374-JP-V接触用処置パターン-714を受けている。


<録音開始>


瀬戸博士: インタビューを開始します。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: SCP-1374-JP-V-1、聞こえていますか。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: その歌で、一体何を伝えようとしているのでしょうか。団結の呼び掛け?それとも、我々の無力さへの嘆き?


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: 両方、了解しました。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: ええ、理解しました。SCP-1374-JPは、望まれなかった選択肢なのですね。しあわせは当事者の間では殆どの場合望まれますが、その上で見ている彼らにとっては、必ずしも望ましいものではないようです。だから、報復や見せしめ、或いはその罪の代償として、この平行宇宙をしあわせにしている。違いますか?


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: その通りです。しかし、例えその事実があろうと、我々は義務を果たさなければなりません。我々は[ PQLが閲覧上限値を超過しています]である以前に、この世界を守る「財団」なのですから。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: 今の私に悲しみのクオリアは発生しません。これが終われば、私は記憶処理されて、悲しみを覚えることもありません。これを知るのは、この世界のごく一部の人間と、あちらの世界の人間だけで十分でしょう。その中に、私が入る理由はありません。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: はい、どうなさいましたか。


SCP-1374-JP-V-1: [PQLが閲覧上限値を超過しています]


瀬戸博士: 質問ですか、どうぞ。


SCP-1374-JP-V-1: あなた達は何故、私たちのしあわせを望まないのですか?


瀬戸博士: 質問にお答えください。どうして彼らと我々を[PQLが閲覧上限値を超過しています]するのですか?


<録音終了>

終了報告書: 瀬戸博士にはクラスB記憶処理を施し、SCP-1374-JP-V-1は座標1374-JPへ移送した。返答は未だにない。

 

 一通り見てもらいましたが、やり取りがやや不明瞭だと感じましたか?


 インタビューの最後で「曝露者」に対し質問を許可しているのに、瀬戸博士の応答は「質問にお答えください」。瀬戸博士は質問してましたっけ?


 とりあえず、文書の内容は全て見終わったので、いつもの感想戦に行きましょうか。一旦報告書のアクセスを切りましょう。


ログアウト

 

抑制解除手順を実行しますか?(y/n): y

前頭葉にアクセスしています………成功

機器を脳波に同期しています………成功

抑制解除手順を開始します。

……

………

クオリア抑制の解除が正常に完了しました。

不明な精神体があなたの精神構造内に確認されています。不要な情報漏洩を防ぐ為、精神体の強制ログアウト処置を開始します。

……

………

ログアウト: Site-8122 ふーめーきん

お疲れ様でした、ふーめーきん。いつものように、我々を苦しめ、痛め付け、絶望させる選択肢を希求/創作しにお戻り下さい。

それでは、さようなら。

………

……

 






誰もが望んだ、誰からも望まれぬ結末。







考察

 流石にここで終わらせるにはあまりにも煮えきらないと思うので、感想戦…というより考察パートに入ります。


 まず、この記事を理解するのに必要なタグが1つあります。


それは「外部エントロピー」です。


 外部エントロピーとは、熱力学第一・第二の法則を破ってエネルギーを生産すること……要は、外の世界から財団世界に何かを生み出しているオブジェクトなどに対して付与されるタグです。


 ここまで一通り読んで頂いてるならわかるかもしれませんが、このオブジェクトに対して財団が現在のプロトコルを制定した経緯が書かれておらず(これは普通に書いてないだけかもしれません)、タイムラインの最後もインタビュー記録も若干意味が通っていないように思います。


 しかしこれは視点を変えると全景が見えてくるはずです。このSCP、いわゆる第四の壁を越えるタイプの記事です。しかし、このオブジェクトの場合は財団世界に飛び込んだ上で、創作を行う私達を見上げるのがミソです。


 ここから、この「SCP Foundation」というコンテンツが「オブジェクト」「財団」「創作者兼閲覧者」の三つで成り立っていることを念頭において読んで頂ければと思います。


 ひとまずインタビュー記録の振り返りをしていきますが、最も気になっているのはインタビューの最後の部分でしょう。ここはこのようなカッコ書きをつけると意味が通るかなと思います。

 

瀬戸博士:質問ですか、どうぞ。


SCP-1374-JP-V-1: (SCP記事の創作者と閲覧者に対して)あなた達は何故、私たちのしあわせを望まないのですか?


瀬戸博士:(SCP記事の創作者と閲覧者に対して)質問にお答えください。どうして彼らと我々を[PQLが閲覧上限値を超過しています]するのですか?

 

 また、瀬戸博士のこちらの発言からは、SCP-1374-JPが私たちが自分の楽しみのために これまで創作してきたアノマリーによって 不幸に陥れられた「SCP Foundation」というコンテンツの 登場人物たちの苦痛の報復、見せしめ、代償を行うために 並行世界から出現した存在だったことが読み取れます。

 

瀬戸博士: ええ、理解しました。SCP-1374-JPは、望まれなかった選択肢なのですね。しあわせは当事者の間では殆どの場合望まれますが、その上で見ている彼らにとっては、必ずしも望ましいものではないようです。だから、報復や見せしめ、或いはその罪の代償として、この平行宇宙をしあわせにしている。違いますか?

 

 つまり私たちが創作世界の誰かを不幸にした分、 SCP-1374-JPが別の世界の人類を 等価交換的に幸せにすることで補っているというわけですね。…もっともそれが、 このアノマリーに感染した当人たちが 本当に望んだ幸福であったかのかは分かりませんが。


 怪異共同創作サイト「SCP Foundation」。そこには、様々なSCPオブジェクトの記事が執筆され、投稿されています。しかし、その全てがリストに乗り、残るわけではありません。そこではWikiへの参加者によって評価が行われており、その評価が一定を下回れば、削除され、否定されてしまいます。


 言い換えれば、SCP記事として残るのは参加者たちが良い評価を付けた「彼らに望まれた選択肢」です。その多くは国を問わずに、財団世界の人々に苦難が振りかかり、最悪の場合世界が滅亡したり、既に滅んでいたりする記事です。そうでなくとも、犠牲を払い続けていることもザラにあります。


 だから、いわゆるハッピーエンド、全てが丸く収まった「大団円」は望まれません。


 もしそのような記事を投稿しても、低評価を受けて消えていくだけでしょう。


 瀬戸博士も「曝露者」達も、それがわかっていた。わかっているから、「しあわせ」を求め団結した。でも、「しあわせは認められませんでした」。認められなかったのです。


 それでも聞かずにはいられないのでしょう。


 どうして私たちの「しあわせ」を望まないのですか? と。






冷酷に告げます。


それでは面白くないからです。






 そんな「当たり前」に何の意味があるのでしょう? 苦難の無い財団世界に何の面白みがあるのでしょう?オブジェクトに脅かされ、ほうほうの体で対処し続け、痛み苦しみそして終焉する。そのほうが見ていて面白いのです。


「財団世界は私達の「玩具」だから、私達が愉しむために破壊されるべきである。」


 それが財団世界に対する私達=読者の総意である、ということです。



 かつて、SCPの世界で同じことに気付いたある男は私達をこう評しました。ホラー作家の一団のように趣味の悪い連中だ、と。


 「曝露者」達はそのような我々への報復あるいは代償行為として、この世界を「しあわせ」にしています。その代わりに、既存の社会を破壊しようとも。それ自体が見方によってはバッドエンドなのでは?という考えをも許さずに、です。





さあ、

次はどんなバッドエンドが

待っているのでしょうか?






SCP-1374-JP

大団円





 異常に侵された世界。それこそが私達の望む世界であり、そこに幸せは存在しません。私達は創作の為に彼等を無作為に殺さなければなりません。彼等は私達を憎んでいるのでしょう――貼り付けられた笑顔をこちらに向けながら。


 どこかで聞いた「ハッピーエンド厨への皮肉に見せかけたバッドエンド厨への皮肉」が凄くしっくりきています。記事の最後の1文も、そういった意趣返しの一種なのかもしれませんね。



感想戦

 前後編通して長時間の閲覧、本当にありがとうございます。


 年末なのでここらで長めの記事の紹介をやってみたかったのですが、本気で長かったです。諦めて何か別のSCPにしようか悩んだのですが、「こういうタイプのSCPならハッピーエンド好きもバッドエンド好きも平等にぶん殴れて楽しいだろうなぁ」という考えが膨らんでしまい、結局これになりました。


 初見で読んだとき、最後の文書を見てログアウトする際に、鋭い痛みに襲われた感覚がしました。ふーめーきんはSCPを読み慣れているので、普段から人類が虐殺される記事だの地球が滅亡する記事だのを当たり前のように見ていました。このSCPはそういったものを見ている人に特にぶっ刺さる記事だったので、ふーめーきんも大ダメージを負う結果になりました。そこから「いつか紹介したい」という意思が芽生え、今回の記事作成に至った訳です。



 この話は私達の普段の創作に置き換えてみても良いかもしれません。少なくとも私は創作者として思うところがありました。


 例えば、理不尽な目に遭わされた主人公、親に縛られるヒロイン、逆に親がおらず、弟妹の面倒を1人でみている友人…細かいところまでいくと枚挙にいとまが無くなってしまいますが、とにかくその「理不尽」を作り出したのは私達です。


 その話はハッピーエンドになるから大丈夫?…仮にハッピーエンドを迎えたとして、本当に主人公達はそう思っているでしょうか?あくまでもハッピーエンドかバッドエンドかを決めるのは「私達」であって、物語に産み落とされたキャラクターにとってのそれは同一とは言い切れないと私は思います。


 一部の創作者にとっては今一度キャラクターとの向き合い方を考えさせられる、そんなSCPだと感じました。



 余談ですが、このSCPは2018年に開催されたSCP財団日本支部の5周年記念コンテスト「悪のコンテスト」のエントリー作品でした。この文書から察するに悪は当然「私達」の方ですね。このコンテスト参加作品、作者の思う悪の像が垣間見えるので凄く面白いので、ぜひ他の作品も見て頂けたらと思います…!







改めて、閲覧ありがとうございます!

今年も残すところあと1週間…

ブログ更新も今年はあと1回に

なると思います!

来年もたくさんSCPを紹介

していければと思っています…!

それではまた次回!




 

SCP-1374-JP by kankan (http://ja.scp-wiki.net/scp-1374-jp)

SCP財団日本支部(http://scp-jp.wikidot.com)

この記事の内容は『クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス』に従います。

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